bookstamoriの日々

書籍の話題やジャズのこと、加えてホットで旬な話題のキーワードをピックアップ。思うところを綴ります

ジャズを聴くには「習う」より「慣れろ」が一番のようで・・・

さて、前回の記事でようやくのことジャズの入り口に立つことになった旨を記しました。

bernies-tune.hatenablog.com


 高校の卒業式前位からだった記憶していますが、ジャズ喫茶へ通い始めました。少しずつですが、ジャズの輪郭がつかめ始めたかな思えば、何やらしっくりとした気分にならず、実に掴みどころがないような思いをする日々が続きました。

当時、人気のあった専門誌『スイングジャール』を読み始めたのはこの頃からです。
また、レコードジャケットの裏面に書かれているメンバープロフィールや曲紹介も丹念に読みましたが、一向に面白みのあるもでは有りませんでした。

ミュージシャンの名前と演奏スタイルを知るのは大事だし、聴くほどに読むほどに記憶に刻まれていきます。

ただし、曲紹介の文章になるとオモシロイと思ったことは余りありませんでした。

例えば、「このブルースはAABAの形式で演奏されており、最初の16小節は・・・」、てな具合で私にとっては殆ど意味不明。

今になって考えてみれば、楽器の心得があるとかジャズの演奏を勉強しているといった同世代の知り合いがいれば、もっと早めに疑問は解消したことでしょうが・・・

 

ジャズの神様、ついに微笑む?

周りの人から、「これはいい演奏だよ」、「これぞ名盤だぜぃ」、「これは聞いておかないと」、「えっ・・・これ知らないの」とかいろいろ聞かされたりしていました。

当時は、都度、否定も肯定もしないような態度で過ごしていたように記憶しています。

若いころは多くの人と知り合いになるのは苦手でした(このことは今もあまり変わりませんが)。それよりも親しいごく少数の友人がいて、そういった人たちと何でも話せるほうがいいと思っていました。

「ジャズを聴くときはいつもひとり・・・」

大学の1年生の夏休み、例によってジャズ喫茶で時間を過ごしていました。

ライブレコーディングなので、冒頭部分は拍手で始まりました。
演奏のイントロはベースとピアノの掛け合いの雰囲気、そして、マイルスのソロが絡んでくる演奏でした。


Miles Davis - 'Four' & More: Recorded Live in Concert (Full Album)

評論家のレコード評だとか周囲のジャズの先達の評判とかも知らず、言わば何の先入観なくこの「'Four' & More」(Miles Davis)に巡り合いました。

この迫力満点の「'Four' & More」(Miles Davis)については、ファンならば誰もが知っている超有名なものです。

ともかくアップテンポで演奏される各曲は感動モノの一言につきる体験でした。

この体験を機会に演奏の輪郭がおぼろげながら掴めるような感覚が芽生えてきたような記憶があります。

ようやくのこと、気まぐれなジャズの神様が微笑みかけてくれたような感じの体験となりました。

 

ジャズの聴きかたについて

 かれこれ10年前くらいに古本屋さんで下記の書籍を見つけました。

ジャズのスタイルブック―スタイリストたちの名演に迫る

ジャズのスタイルブック―スタイリストたちの名演に迫る

 

 1940年代以降のジャズのスタイルについて、ミュージシャンでもある著者がかなり詳しくジャズについて述べています。

その中の一節で、「聴き方のテクニック」について書かれている個所がありました。レコードの選定から聴くべき回数も指定してあります。

  • 管楽器(サックス、トランペット、トロンボーンのうちいずれか)とピアノ・ベース・ドラムスの演奏、しかもベースやドラマーの演奏がはっきりと聞き取れる録音である事

  • 例えば、マイルスであれば「ソーサラー」、「いつかは王子様が」、「マイルストーンズ」等がリストアップされています(他にもあるのですが割愛)。

  • どれか任意の一枚を選んだら・・・

    最初は、ドラムスとシンバル以外のそれぞれの音に耳を集中します。

    二回目は、ソロプレイヤーとベーシストに注意しながら聴きます。

    三回目は、ソロプレイヤーは無視してピアノ、ベース、そしてドラムスを聴く。

    四回目は、ピアニストが演奏するコードと、ソロプレイヤーが演奏している音との相互作用の以外については無視する。

    この四回のヒアリングの終了後に、もう四回聴く。

 と、説いています。

要するに音をはっきりと区別して聴き取るトレーニングを行い、それぞれの楽器の奏でる音の相互関係を観察する必要がある旨を強調しています。

聴く体験の乏しいうちは、全体がなかなか掴めなかったような記憶があります。いま思えば、各楽器の音をハッキリと区別して聴くようなスタンスなんぞ有りませんでした。最初の頃、聴き方については全く無知だったなぁと思い出しています。

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ジャズへの「ハマリ」、始まりはソニーロリンズの一曲からでした

さて、偶然にも耳にした音楽に魅せられて、お気に入りの演奏に巡り合えたとしましょう・・・

本日は、たまたまの巡り合いでお気に入りの演奏に遭遇し、以後ジャズにハマっていった私の経験をお話ししたいと思います。

始まりはラジオ深夜放送で聴いたソニーロリンズの演奏でした

高校最後の冬休みだったと記憶しているのですが、故・大橋巨泉がDJをする番組で、当日はジャズに関する話で彼の「名演奏」という事で紹介されたもの。


Sonny Rollins - Moiritat (Mack the Knife)

 

当時はビートルズ全盛の時代で私もよく耳にしていましたが、初めてこの演奏を耳にしたときの感動というか心の高揚感はそれまでの音楽体験とは全く異質のモノでした。

当時、歌謡曲フォークソング・(英米の)ポピュラーミュージックなど意識せずに何でも聞いていました。いわばBGM的だったのでしょうね・・・

ところがこの時のS.ロリンズの演奏がもたらした、いち音いち音が心中にグイと踏み込んでくるようにしか聴こえないような強烈な印象は、それまでとは全く異質の体験だったことを鮮やかに記憶しています。

ソニーロリンズの個性については、大橋巨泉のナマの声で評価を聴く事が出来ます。
陽気な雰囲気で豪快に吹いている彼の演奏はとてもダイナミックです。


巨泉のジャズスタジオ Sonny Rollins 、増尾好秋 "St. Thomas"

 

ジャズに興味を持ち始めたのは良いけれど・・・

ジャズを聴きはじめた時代、決して多くの人が慣れ親しんでいる音楽でもないので、関連情報を収集するのはなかなか大変でした。

インターネットのある今の時代と比べれば、圧倒的に乏しい情報環境のなかで、ほぼ唯一、四六時中ジャズの聴ける場所が有りました。今となっては、探すのが難しくなってしまった「ジャズ喫茶」という存在です。

 

このジャズ喫茶という業態、振り返ってみれば、異様な雰囲気だったとピーター・バラカン(音楽評論家)は語っています。

彼に言わせると、母国ではこのような店で「しゃべっちゃいけない」はちょっと考えられない・・・。日本に住み始めてから、オーディオを購入するまで何度か通ったけど、家で聴けるようになったらジャズ喫茶へは通わなくなったとのこと。

異文化の人からすると、面食らうような場所だったのでしょうね。

ただ、ジャズを知り始めた十八歳にしてみれば、山のごとくジャズのレコードがあって、昼頃から夜まで営業しているし桃源郷(?)のようなもの。
聴きたくなればそこへ行けばよいということから学生の頃はよく通ったものです。

 次から次へとかかるレコード、当然のことですが殆ど言ってよいほど知っているものはごく少数。加えて、「ジャズ」と称する音楽、当然でしょうが実に幅広い。

例えば、1950年代に音楽的素養に基本をおいていて白人が中心となって発展したウエストコーストジャズと称するジャンルのサウンドと上記のソニーロリンズの楽曲とは全く異なる趣き。
主として黒人たちが推進させていったイーストコースト系ジャズとは質的にもかなり異なるのです。

当時の私の拙い知識や鑑賞力ではとても太刀打ちの出来るようなものではなく、その違いもよく知らなかったので、ウエストコースト系のジャズレコードがかかると退屈な思いをしたものです。

また、ビルエバンスの静かな演奏スタイルも聴くのは苦手な部類に入っていました。
今、振り返ってみると当時の演奏を改めて聴いてみると、決して「静かな演奏」というものでもありません。

う~ん・・・。

最初のうちはどうもとんでもない聴き方をしていたのかもしれませんね。

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