bookstamoriの日々

書籍の話題やジャズのこと、加えてホットで旬な話題のキーワードをピックアップ。思うところを綴ります

ジャズに言及するモダンなおじさん「植草甚一」さんの著作を読み返す・・・

ジャズを聴き始めたころ、今の時代に比べたらジャズに関する情報は圧倒的に少ないものでした。

ジャズを聴いてみたいと思っても、ラジオ番組だと週一回の放送があれば良い方。専門雑誌はスイングジャーナルくらい。ジャズに関する本はあったのだろうけど、これとて小さな本屋さんでは、マイナーなジャンルの本は期待できません。
繁華街にある大きな本屋さんで探さなきゃならなかったもんです。

時間があったし本好きでもあったので、探し求めたすえに、ジャズについて本格的に書かれている著作に巡りあいました。

ジャズの前衛と黒人たち

ジャズの前衛と黒人たち

 

この著作、雑誌「スイングジャーナル」連載していた文章を一冊にまとめたもの。 

内容は、著者が40代からジャズを聴き始めたみたいなことから始まり、ジャズ全般(ジャズの草創期から前衛的なスタイルまで)についてや、黒人問題やヒッピー文化についても言及してあったりもします。

本を読むのは苦手ではなかったものの、名前の知らないジャズミュージシャンは数多く出てくるわ、J・ケルアックの話は出てくるわ・・・で、「あ~ 俺はなんにも知らんもんだ」と思いつつ、字面だけ追うのが精いっぱい。

かろうじて、S.ロリンズだとかM.ディビスなど知っている名前が出てきて一安心しても、記事中で紹介されている演奏については聴いたこともなく、これまた惨めな思いに浸らざるを得ない・・・よな、でした。

Youtubeはジャズ情報に関する宝庫です

若かりし頃から、幾星霜・・・


先日、古本屋で植草仁一の文庫に巡り合いました。こちらの方は、前掲の『ジャズの前衛と黒人たち』よりも親しみやすい内容の文章で構成されているように思います。


色んな箇所で、ジャズプレイヤーの名前とLPレコードに収録され、氏の印象に残った曲が掲載されています。

それからレッド・ガーランドというピアニストは最近あまりパッとしないが、この人の「セントルイス・ブルース」(プレスティッジ盤)なんかも、とても味がある演奏だった

 と、まぁ、こんなくだりがあったりします。

この文庫の発売は1983年7月でした。

例えば、当時にこのくだりに接して、「聞いてみたいなぁ・・・」と思いつけばどれ位のエネルギーを必要としたことかと・・・

今じゃこの曲をYoutubeで検索すると、実に簡単にヒットして曲を体験できるんですねぇ。


Red Garland - St. Louis Blues

この演奏に対する評価の表れなのでしょう。

一曲だけ決め打ちで、アップロードしてあるってのもスゴイ。

インターネットの出現って、大変に革新的な出来事なんですよねぇ・・・

 

ローランド・カークというジャズミュージシャンのリアルな画像に出会えて永年の疑問は氷解の巻!

 本日の午後、珍しくジャズに関する本に目を通していました。
(ジャズは朝から晩まで聞いても、ジャズに関する本は余り読まない、特に最近は)

 印象に残った箇所があって、ミュージシャンのテクニックと表現力について書かれていました。
ジャズの世界でも超絶技巧(?)のプレイヤーが出現する、とのこと。
一例として、スタンリー・ジョーダンというギタリストが引き合いに出されていました。

Wikipediaでは下記のように紹介されていました。

ギターの指板上で両手の指をタッピングさせる奏法を特徴とする。


Wikipediaといえども、この説明だけでは多くの読者にはピンときませんよねぇ。

前掲の本のなかで著者・後藤氏は彼の演奏を間近に見たということで、彼の演奏スタイルを詳しく説明してくれています。

エレクトリックギターを右手で、普通にピッキングすると同時に、左手でも弦を、ピアノの鍵盤を押さえるようにしてメロディー・ラインを演奏してしまう。つまり一本のギターから同時に二つの旋律を弾きだしてしまう・・・(略)

 
下記のビデオでは、なんと二つのギターを同時に演奏というスゴ技も閲覧可能であります・・・


天国への階段 by  スタンリー・ジョーダン 1991 (Stairway to Heaven by Stanley Jordan 1991)

 

さて、本題のローランドカークはマルチリード奏者なんですが

表題に掲げた「ローランド・カーク」、幼いころに病院の看護婦の手違いで目が不自由になってしまったと云う不幸な過去があったそうです。

 

この人のレコードを始めて聞いたとき「複数のマウスピースを同時にくわえて吹くんだぜぃ・・・」と、「ホンマカイナ?」と大いなる疑問に襲われてしまうようなエピソードをその道の大先達から聞かされておりました。


レコードのジャケット写真では、そう言われてみれば・・・まぁ、そうかな、という感じ(注;向かって左から二人目がローランドカーク)。

ヴォランティアード・スレイヴリー<SHM-CD>


再び、前掲の著作からの引用となりますが・・・

彼はテナーサックスを吹くと同時に、やはりサックスの仲間とマンゼロとストリッチという楽器をまとめて口にくわえ、三本の楽器をいっぺんに慣らしてしまうのだ(後略)

 

そして、続いてもう一箇所かなり興味ある記述がありました。

彼は、夢のなかで二本の楽器を同時に吹いている自分を見た(後略)

 目の不自由な人でも「夢を見る」ことがある・・・という記述は注目したいところ

ただ本日は、表題の主旨から外れますので、このことは別の機会にでも。


いずれにせよ本日、Youtubeで見た下記のビデオでは、若きころの「ホンマカイナ?」は完全に解消されました。
いやはや、永年の疑問がこんな形で解消されるとは想像だにしておりませんでした。

ご興味をもたれた賢明なる読者のお方様、ご一覧あれ!。


単なる見世物的演奏なんぞではなく、充分に感動的な演奏であります。

司会はクインシー・ジョーンズ。ピアノの伴奏はマッコイタイナーですが、最後に映る人は何故かチック・コリアです・・・


Roland Kirk with McCoy Tyner Stanley Clarke 1975