bookstamoriの日々

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『ジャズ名盤ベスト1000(学研M文庫)』の編者・安原顕のこと

昨日、アマゾンのマーケットプレイスに出品していた『ジャズ名盤ベスト1000(学研M文庫)』に買い手がつきました。
内容は、気鋭の評論家20人がピックアップしたジャズレコード1000枚の紹介を書籍です.。目次を見ると壮観な感じがするくらいの評論家の諸氏が並んでいます。

内容はさておき、編者の名前が目に留まりました。

どこかで聞いた記憶があって、ちょっと調べましたら、出版業界では名物編集者として名を馳せた人物。すでに故人(2003年1月20日永眠)。

ジャズやオーディオの世界にも詳しいらしく、寺島靖国氏とも故意であったようだ。
共著として『JAZZジャイアンツ名盤はこれだ! 』も出ている。これは読んだ記憶がある程度。たしか、ポール・デズモンドを高く評価した箇所があったと記憶している。どちらの著者の考えだったかは思い出せないけれど、私もポール・デズモンドの演奏は好きだ。ただ、寺島氏のジャズ評論はどうも相性があわない。

 

ほんの内容はさておき、『JAZZジャイアンツ名盤はこれだ! 』のレビュー欄に、下記のコメントを見つけた。

共同著者の安原顕といえば、村上春樹の生原稿を勝手に古本屋に売り払ったと話題になった人ですよね。

 村上春樹の生原稿が古書店で売られていた事件は記憶があったけれど、誰の手によって流失がなされたなんて、全く知りませんでした。

「作家の生原稿を売りはらう行為」について・・・

著名な作家の自筆原稿なんてのは、例えばXXX文学記念館といった施設でうやうやしく展示されているのを連想してしまう。

確かに、著者や編集関係者以外の第三者は入手が殆ど困難なものと容易に想像がつく。この件も希少価値であるがゆえに単純に「お金欲しさ」程度だろう、と思っていました。

このブログの記事を書くにあたりググっていたら、村上春樹の自筆原稿を編集者が売り払った行為に関する感想を述べた内田樹氏のブログが目に留まりました。

blog.tatsuru.com

内田氏の結論めいた内容を引用しておきます。

原稿を「モノ」として売るということは、作品をただの「希少財」(珍しい切手やコインと同じような)とみなしたということである。
死にかけた人間がいくばくかの金を求めてそんなことをするはずがない。

これはおそらく作品の「文学性」を毀損することだけを目的としてなされた行為と見るべきだろう。
「こんなものは文学じゃない。これはただの商品だ」 安原顯はそう言いたかったのだと思う。


雑誌に発表されていた村上春樹の安原顕に対する述懐に触れていたり、安原の屈折したメンタリティーに関する分析等が述べられており、実に興味深い内容の文章であると感じました。

興味ある方は是非、ご一読の程。